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描きながら考える。
情けないことに「何を描くか」という主題さえ持ち合わせていない。白い画布を前に焦燥が勝り、とりあえず描き始める。/例えば、幼児のなぐり描きのように、無秩序のようでありながら自分の腕の意志を持ち、この瞬間の生が乗り移ったような筆致でありたい。
描きながら考える。
私の中の片方が「黒の形を!」と言えば、もう片方が「光に向かえ!」と指令する。絵の中で不穏と祝祭が相克する。/私が絵を志した1974年、兄が五浦の六角堂のそばで死んだ。2007年、六角堂に絵を展示する機会に恵まれ、花を描いた。
描きながら考える。
完成は不意に訪れる。静寂に包まれ、全体が「自然」に見える。/森に例えてみよう。遠くから見る森は、緑の変化や大気による奥行きなどで目を喜ばせてくれる。一歩、森に入れば木々の枝葉、鳥や昆虫、草や地面など、不快な棘や毒も含め、感触を伴い実在する。絵画は両方の経験を含むものでありたい。
「6つの個展 2020」図録より (茨城県近代美術館発行)
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